円周溶接部デジタルX線検査システム

はじめに

パイプライン建設時の円周溶接部の非破壊検査は、パイプライン構造の信頼性を保証するために、非常に重要です。様々な非破壊検査方法の中でも、X線フィルムを用いた放射線透過検査(以下、F-RT:Film Radiographic Testing)が主に適用されています。ガス工作物技術基準・同解釈例において、最高使用圧力毎に検査頻度が定められ、高圧幹線の建設時は、全ての円周溶接部にF-RTを適用しています。
円周溶接部デジタルX線検査システム『NSDART®』(エヌエス・ダート)は、デジタル検出器による放射線透過検査(以下、D-RT:Digital Radiographic Testing)を実施するための機器です。NSDARTは、従来のフィルムとは異なり、現像等の作業が必要なく、X線照射直後に検査対象箇所のデジタル画像を取得することが可能です。NSDARTを高圧幹線の建設時に導入することで、撮影から判定までの作業時間を大幅に短縮することが可能です。さらに、画像管理の省力化や環境負荷の低減といった大きな効果も期待できます。

 

機器構成

NSDARTの開発段階では、D-RTの国内規格が未整備であったため、ISO17636-2 (2013)「Non-destructive testing of welds –Radiographic testing- Part2: X- and gamma-ray techniques with digital detectors」に基づき画像を撮影し、きず判定をJIS Z 3104 (1995)「鋼溶接継手の放射線透過試験方法」で判定する方針を定めた上で、JIS Z 3104に基づき撮影したフィルムと同等の判定結果が得られるように機器設計をしています。

 

 

NSDARTの特長

透過画像例:JIS Z 2306 透過度計08F

NSDARTは、以下の特長を有しており、内部線源撮影方法が可能な400A以上の鋼管に対して、円周溶接部の全周自動撮影が可能です。

透過画像の判定支援機能

専用ソフトウェアは、「自動撮影:円周溶接継手部の全周を自動で撮影する」、「手動撮影:所定の位置に移動させ撮影する」、「再撮影:指定箇所リストに基づき、自動で指定箇所を撮影する」、「判定処理:判定時に使用する」のモードがあり、判定処理モードは、下表に示す判定支援機能を備えています。